WordPressで作るか、モダンスタックで作るか|選定基準を整理
Web制作会社の選び方・発注ガイドWordPressで作るかモダンスタックで作るかの選定基準を整理します。表示速度・セキュリティ・AI統合・長期TCOの観点から、プロジェクト特性に応じた選択フローをまとめています。
はじめに
Web制作を発注する際、必ず議論になるのが「CMSと技術スタックの選定」です。特に「WordPressを使うか、それ以外の選択肢を取るか」は、サイトの表示速度・セキュリティ・運用コスト・拡張性に直結する重要な意思決定です。
制作会社からの提案を評価するためにも、発注側がこの違いを理解しておくことは不可欠です。本記事では、WordPressとモダンスタック(Next.js+ヘッドレスCMS等)の特徴を比較し、どのような条件でどちらを選ぶべきかの判断基準を整理します。
WordPressの現状と強み
WordPressは現在も世界のWebサイトの約40%以上で使用されている最も普及したCMSです。2003年のリリースから20年以上にわたって改善が続けられており、膨大なプラグインエコシステムと制作者の裾野の広さが最大の強みです。
WordPressの主な強み
普及率と人材の豊富さ:制作・運用できる人材が多く、制作会社・フリーランスを問わず対応可能な会社を見つけやすい
プラグインの豊富さ:フォーム・SEO・セキュリティ・EC機能など、多くの機能をプラグインで実現できます
編集のしやすさ:Gutenbergエディター(ブロックエディター)の進化により、非エンジニアでもコンテンツ更新がしやすい
コスト:初期構築費用・保守費用ともに、モダンスタックよりも低コストで対応できる会社が多いです
WordPressが抱える課題
一方でWordPressには、2025年現在でも解決が難しい構造的な課題があります。
表示速度の問題
WordPressはPHPによるサーバーサイドレンダリングが基本であり、最適化なしでは表示速度が遅くなりやすい。Core Web Vitalsのスコアを高く保つためには、キャッシュプラグイン・CDN・画像最適化などの複数の追加施策が必要になります。
セキュリティリスク
シェアが高いがゆえに、WordPressを標的とした攻撃が多いです。プラグインの脆弱性・コアのアップデート漏れ・不正ログインなどのリスクが常に存在し、継続的なセキュリティ管理が必要です。
技術的負債の蓄積
古いWordPressサイトは、プラグインの互換性問題・テーマのカスタマイズによるスパゲッティコードなど、時間とともに技術的負債が蓄積します。数年後のリニューアル時に大規模なリファクタリングが必要になるケースが多いです。
拡張の限界
WordPressはもともとブログCMSとして設計されており、複雑なデータ構造や高度なUIインタラクションには限界があります。
モダンスタックとは何か
モダンスタックとは、Next.js・Astro等のフロントエンドフレームワークと、ヘッドレスCMS(Contentful・microCMS・Orizm等)を組み合わせたアーキテクチャの総称です。Vercelのようなエッジ配信インフラと組み合わせることで、従来型サイトとは一線を画するパフォーマンスを実現できます。
モダンスタックの主な構成例
この構成の核心は「フロントエンドとコンテンツ管理の分離」です。コンテンツはAPIを通じて取得され、フロントエンドは事前に静的生成(SSG)またはインクリメンタル静的再生成(ISR)によって生成されます。これにより、従来のサーバーサイドレンダリングでは実現が難しかった表示速度とセキュリティを同時に達成できます。
2つの選択肢の比較
比較軸 | WordPress | モダンスタック |
初期費用 | 低〜中 | 中〜高 |
長期的な保守費 | 中〜高(管理が複雑になりやすい) | 低〜中(シンプルな構成を維持しやすい) |
表示速度 | 要最適化(デフォルトでは遅い) | 高速(設計段階から最適化) |
セキュリティ | 継続的な管理が必要 | 攻撃面が小さい(静的配信) |
Core Web Vitals | 対策が必要 | 高スコアが取りやすい |
編集のしやすさ | ○(多くの人が慣れている) | ○(ヘッドレスCMSの進化により向上) |
拡張性・将来性 | △(技術的負債が蓄積しやすい) | ◎(モダンアーキテクチャで拡張しやすい) |
AI機能との統合 | △(プラグイン依存) | ◎(API設計で自由度が高い) |
対応できる制作会社数 | 多い | 少ない(専門知識が必要) |
どちらを選ぶべきか|判断基準
WordPressが適しているケース
予算が限られており、スピードを優先したい:初期費用・制作期間ともにWordPressが有利
既存のWordPressサイトとの継続性を重視する:移行コストを避けたい場合
コンテンツ更新担当者がWordPressに慣れている:移行による学習コストを避けたい場合
機能要件がシンプル:ブログ・会社案内・採用情報程度の更新頻度が低いサイト
モダンスタックが適しているケース
表示速度とSEOスコアを最重視する:Core Web Vitalsの高スコアを維持したい大手・BtoB企業
コンテンツ量が多く、大規模メディアを運営する:ヘッドレスCMSの管理性が活きる
AIアシスタント・AIエージェントの統合を視野に入れている:APIベースの設計で将来の機能拡張が容易
複数チャネルへのコンテンツ配信が必要:Webサイト・アプリ・メール等へ同一コンテンツを配信
セキュリティ要件が厳しい:WordPressの攻撃リスクを避けたい
長期的な保守コストを抑えたい:技術的負債の蓄積を防ぎたい
ヘッドレスWordPressという中間の選択肢
「WordPressの編集体験は使い続けたいが、フロントエンドの自由度を上げたい」という場合、ヘッドレスWordPressという選択肢もあります。WordPressをコンテンツ管理のバックエンドとして使いながら、Next.js等でフロントエンドを構築するアプローチです。
ただし、ヘッドレスWordPressはフルスタックのモダンスタックに比べると構成が複雑になりやすく、初期費用も増加する傾向があります。明確なメリットがある場合を除き、最初から適切なヘッドレスCMSを選定する方が長期的にはシンプルです。
制作会社の提案を評価する視点
制作会社から技術スタックの提案を受けた際、以下の点を確認します。
「なぜその技術を選ぶのか」を説明できるか
「うちはWordPressしかやりません」「何でもNext.jsで作ります」という画一的な回答ではなく、自社の要件・規模・運用体制を踏まえた選定理由を説明できる会社が信頼できます。
運用担当者の視点を持っているか
制作後に自社のWebチームが更新・管理するCMSとして、使いやすいかどうかを提案に組み込んでいるかを確認します。
将来の拡張性を考慮しているか
3〜5年後のサイト拡張・機能追加を見据えた設計思想を持っているかを確認します。
まとめ
WordPressとモダンスタックは、それぞれ適したユースケースが異なります。シンプルなサイトや予算が限られたプロジェクトではWordPressが現実的な選択ですが、大規模コンテンツサイト・高パフォーマンスが求められるBtoBサイト・AI機能の統合を視野に入れたサイトでは、モダンスタックへの投資対効果は高いです。
発注先を選ぶ際は、「何を作りたいか」だけでなく「3年後にどんなサイトにしたいか」を制作会社と議論し、その視点から技術選定を行う会社を選ぶことが重要です。次の記事では、東京のWeb制作会社の探し方と選定における地域・得意領域別の視点を解説します。
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