ヘッドレスCMS導入事例|大規模コーポレートサイトのリニューアルケース
CMS徹底解説大規模コーポレートサイトのヘッドレスCMS導入事例を解説します。WordPress移行の背景・技術スタック選定・移行プロセス・導入後の成果指標をまとめています。
はじめに
本記事では、大手BtoB企業B社(従業員500名・製造業)のコーポレートサイトリニューアルにおけるヘッドレスCMS導入のケーススタディを解説します。約200ページのWordPressサイトをNext.js+Orizm(ヘッドレスCMS)+Vercelに移行し、LCP 4.8秒→1.4秒への高速化・セキュリティ強化・AIアシスタント統合を実現した事例です。
企業・プロジェクトの背景
企業概要
業種:産業用機器の製造・販売・保守(BtoB)
従業員数:500名
旧サイト:WordPressで構築、制作から7年が経過
ページ数:約200ページ(製品カタログ・事例・技術情報・サポートを含む)
プロジェクト開始の経緯
IT部門から「WordPressのセキュリティ対応に年間多くの工数を費やしており、プラグインの互換性問題も頻発している」という課題が提起されました。マーケティング部門からは「検索順位が競合に比べて低下しており、新規リード獲得に支障が出ている」という指摘がありました。
経営会議でデジタルマーケティングの強化が決定し、3年後の目標として「サイト経由のリード数現状比3倍」が設定されました。
現状分析の結果
技術パフォーマンス
指標 | 旧サイト(WordPress) |
LCP(モバイル) | 4.8秒 |
PageSpeed Insightsスコア(モバイル) | 31 |
Core Web Vitals「良好」達成率 | 12% |
SSL証明書の自動更新 | 未設定(手動対応) |
ビジネス指標
指標 | 旧サイト |
月次オーガニック流入 | 8,200セッション |
月次リード数(問い合わせ+資料DL) | 45件 |
平均直帰率 | 78% |
モバイル流入比率 | 62% |
運用課題
月平均8時間をWordPressのアップデート・プラグイン互換性対応に費やしていた
セキュリティ監視ツールが月2〜3件の不審なアクセスを検知していた
200ページのうち、担当者が更新の仕方を把握しているのは約50ページでした
技術スタックの選定
なぜWordPressをやめたか
PageSpeed InsightsのLCP 4.8秒は、SEOの観点から大きなハンデでした。WordPressの高速化施策(WP Rocket・Cloudflare・WebP変換)を実施しても、LCP 2.5秒以下の達成が構造的に困難と判断しました。
また、7年間で積み重なったプラグイン32個の管理負荷と、うち5個が既にサポート終了していたセキュリティリスクが、移行を決断させる最後の理由になりました。
選定した技術スタック
役割 | 採用技術 | 選定理由 |
フロントエンド | Next.js 15(App Router) | 最新のReactフレームワーク・静的生成とISRの両立 |
ホスティング | Vercel | Next.jsとの最高の親和性・エッジ配信 |
CMS | Orizm | 日本語サポート・AI統合・3タイプのコンテンツ管理 |
全文検索 | Algolia | 高速な全文検索・製品・事例・技術情報の横断検索 |
MAツール連携 | HubSpot | フォーム→リード管理の自動化 |
AIアシスタント | Claude API(Vercel AI SDK) | コンテンツベースの回答精度と日本語対応 |
画像管理 | Cloudinary | 大量の製品画像の最適化・変換 |
設計のポイント
コンテンツ構造の再設計
旧サイトの200ページは、WordPressの投稿・固定ページ・カスタム投稿タイプで管理されており、どのコンテンツがどこで管理されているかを把握している担当者が限られていました。
新設計では、Orizmの3タイプ管理(リスト型・オブジェクト型・固定型)に基づいてコンテンツを整理しました。
リスト型:製品情報・導入事例・ニュース・採用情報・技術ブログ
オブジェクト型:会社概要・代表メッセージ・事業領域・アクセス情報
固定型:トップページのバナー・グローバルナビゲーション・フッター
この整理により、コンテンツ担当者が「自分が管理すべきコンテンツ」を明確に把握できるようになりました。
AIアシスタントの設計
Orizmのコンテンツ(製品情報・事例・技術情報・FAQ)をRAG(Retrieval Augmented Generation)の知識ベースとして使用し、訪問者の質問に対してサイトのコンテンツを参照しながら回答するAIアシスタントを実装しました。
AIアシスタントの主な機能
製品に関する技術的な質問への回答
業種・課題に合った製品・事例の提案
問い合わせ前のプレスクリーニング(AIが基本情報をヒアリングし、商談確度を高めた状態で営業に引き継ぐ)
プロジェクトの進め方
スケジュール概要
フェーズ | 期間 | 主な作業 |
要件定義・設計 | 4週間 | コンテンツ構造設計・新サイトマップ・ワイヤーフレーム |
デザイン | 5週間 | UIデザイン・デザインシステム構築 |
フロントエンド実装 | 8週間 | Next.js実装・Orizm連携・Algolia連携 |
コンテンツ移行 | 8週間(並行) | 200ページのコンテンツ移行・品質確認 |
AIアシスタント実装 | 4週間(並行) | Claude API連携・RAG設計・UIデザイン |
テスト・修正 | 3週間 | QA・パフォーマンス検証・SEO移行確認 |
公開・移行 | 1週間 | DNS切り替え・リダイレクト設定・Search Console更新 |
合計 | 約6ヶ月 |
SEO移行への対応
200ページのURLのうち、Search Consoleで流入が確認された43URLについて、リダイレクト設計を優先しました。主要URLはURLを変更せず維持し、構造変更が必要なURLのみ301リダイレクトを設定しました。
リダイレクトテストはScreaming Frogで全URLを検証し、設定漏れをゼロに抑えました。
リニューアル後の成果
パフォーマンス指標
指標 | 旧サイト | 新サイト(3ヶ月後) | 変化 |
LCP(モバイル) | 4.8秒 | 1.4秒 | 3.4倍改善 |
PageSpeed Insightsスコア(モバイル) | 31 | 89 | +58点 |
Core Web Vitals「良好」達成率 | 12% | 94% | +82pt |
直帰率 | 78% | 55% | 23pt改善 |
ビジネス指標(6ヶ月後)
指標 | 旧サイト | 新サイト(6ヶ月後) | 変化 |
月次オーガニック流入 | 8,200 | 18,500 | 2.3倍 |
月次リード数 | 45件 | 128件 | 2.8倍 |
AIアシスタント利用数 | — | 月640件 | — |
AIアシスタントからの問い合わせ転換 | — | 月32件 | — |
運用コストへの影響
WordPressのアップデート・プラグイン対応工数:月8時間→ゼロ
セキュリティインシデント検知:月2〜3件→ゼロ
コンテンツ更新を「自分でできる」と答えた担当者の割合:25%→82%
プロジェクトから得られた教訓
教訓1:コンテンツ構造の再設計が最も価値を生む
技術スタックの変更よりも、「どのコンテンツをどの種別で管理するか」を整理したことが、運用担当者の働きやすさと新規コンテンツ制作の加速に最も貢献しました。
教訓2:AIアシスタントはソフトCVポイントとして機能する
AIアシスタント経由の問い合わせ月32件は、全リード128件の25%を占めた。「24時間対応のソフトCVポイント」として、特に営業時間外のリード獲得に貢献しました。
教訓3:SEO移行は慎重に行えばリスクを最小化できる
適切なリダイレクト設計・サイトマップ更新・Search Consoleモニタリングにより、リニューアル直後の流入減少を最小限に抑えることができました。公開から8週間でリニューアル前の水準を超えました。
まとめ
本ケーススタディは、7年間運用したWordPressサイトのヘッドレスCMS移行が、表示速度3倍・リード2.8倍という成果をもたらした事例です。AIアシスタントの統合も含め、デジタル競争力を構造的に高める投資として機能しました。
次の記事では、ちょっと株式会社が開発するOrizmの詳細——機能・特徴・他CMSとの違い——を解説します。
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