表示速度改善プロジェクトの進め方|診断から施策実装まで
サイト表示速度とCore Web Vitals表示速度改善プロジェクトの進め方として診断から施策実装までを解説します。現状診断・優先順位付け・実装チェックリスト・効果測定・継続的モニタリング体制の設計をまとめています。
はじめに
「サイトが遅いから改善したい」という要望を持つ企業・担当者は多いが、「どの順序で・何をすれば良いか」という実務的な進め方は意外と情報がありません。場当たり的に施策を打ち始めると、効果の大きい施策を見逃したり、根本的な原因に気づかないまま時間を費やすリスクがあります。
本記事では、表示速度改善プロジェクトを診断から施策実装・効果測定・継続運用まで体系的に進めるためのロードマップを解説します。
Phase 1:現状診断(1〜2週間)
1-1. 全体的な数値の把握
まずすべての計測は「記録する」ことから始める。改善前の数値を記録しておかないと、効果の検証ができません。
計測すべき指標
指標 | 計測ツール | 記録場所 |
PageSpeed InsightsスコアM(モバイル) | PageSpeed Insights | スプレッドシート |
PageSpeed InsightsスコアD(デスクトップ) | PageSpeed Insights | スプレッドシート |
LCP(Lab Data) | PageSpeed Insights | スプレッドシート |
CLS(Lab Data) | PageSpeed Insights | スプレッドシート |
TBT(Lab Data) | PageSpeed Insights | スプレッドシート |
Core Web Vitals評価(Field Data) | Search Console | スプレッドシート |
月間オーガニック流入 | GA4 | スプレッドシート |
平均直帰率 | GA4 | スプレッドシート |
計測するページの選定
全ページを計測するのは現実的でません。以下の優先順位でページを選定します。
トップページ(最も重要・最も多くのユーザーが訪問)
流入数が多いランディングページ(GA4のオーガニック流入上位5〜10ページ)
コンバージョンに最も関連するページ(問い合わせ・申し込みページ)
1-2. 詳細な原因特定
PageSpeed InsightsのOpportunitiesとDiagnosticsを精査し、各ページの速度低下の原因を特定します。
原因を分類します
画像系の問題
「次世代フォーマットで画像を配信する」(WebP未使用)
「適切なサイズの画像を使用する」(過大なサイズの画像)
「オフスクリーン画像の遅延読み込み」(lazy loadingの未設定)
「LCPイメージの事前読み込み」(priorityの未設定)
JavaScript系の問題
「JavaScriptの実行時間を削減する」
「未使用のJavaScriptを削除する」
「レンダリングをブロックするリソース」
サーバー・ネットワーク系の問題
「最初のバイトまでの時間を短縮する」(TTFB改善)
「静的なアセットへの効率的なキャッシュポリシーを使用する」
CSS系の問題
「未使用のCSSを削除する」
「重要なリソースを事前に読み込む」
1-3. 競合との比較
同業種・同規模の競合サイトを3〜5社選び、同じ計測をして比較します。
「自社のスコアが60でも、競合がすべて40〜50なら相対的には問題が小さい」という判断ができます。逆に「競合が90台なのに自社が40台なら深刻な差がある」という判断ができます。
Phase 2:改善計画の策定(1週間)
2-1. 施策の優先順位付け
Phase 1で特定した問題を、「効果の大きさ」と「実装の難易度」で2×2のマトリクスに整理します。
効果大 × 実装易しい | → 最優先で実施 |
効果大 × 実装難しい | → 中優先(計画を立てて実施) |
効果小 × 実装易しい | → 後回し(余裕があれば実施) |
効果小 × 実装難しい | → 対象外 |
一般的に「効果大 × 実装易しい」に該当する施策
LCP画像へのpriority設定(Next.jsの場合・数時間で実装可能)
画像最適化プラグインの導入(WordPressの場合・1〜2日で完了)
キャッシュプラグインの導入(WordPressの場合・1〜2日で完了)
「効果大 × 実装難しい」に該当する施策
技術スタックの移行(WordPress→Next.js:3〜6ヶ月のプロジェクト)
CDNの導入(既存のホスティング環境によっては複雑)
レンダリングブロックするJSの根本的な解決
2-2. KPIと目標値の設定
改善後の目標値を設定します。現状と業種・用途を踏まえた現実的な目標とします。
目標値の設定例
指標 | 現状 | 3ヶ月目標 | 6ヶ月目標 |
PageSpeed Insightsスコア(M) | 42 | 65 | 80 |
LCP(Lab Data) | 4.8秒 | 3.0秒以下 | 2.0秒以下 |
CLS | 0.28 | 0.1以下 | 0.05以下 |
直帰率 | 78% | 70% | 65% |
Phase 3:施策の実装(2〜8週間)
3-1. 実装フローの原則
一つずつ実施して効果を確認する
複数の施策を同時に実施すると、どの施策が効果があったかを判断できなくなります。可能な限り1施策ずつ実施して効果を確認します。
本番環境ではなくステージング環境で先に検証する
パフォーマンス最適化の設定変更が既存機能に影響を与える場合があります。本番前にステージング環境でテストします。
3-2. 実装チェックリスト
画像最適化
[ ] ファーストビューのLCP画像にpriority(またはfetchpriority="high")を設定
[ ] ファーストビュー外の画像にloading="lazy"を設定
[ ] すべての画像にwidth・heightを指定
[ ] 画像をWebP形式に変換
[ ] next/imageコンポーネントへの移行(Next.jsの場合)
フォント
[ ] Google Fontsをセルフホスティングまたはnext/fontを使用
[ ] font-display: swapの設定
[ ] 未使用のウェイト・文字セットを削除
JavaScript・CSS
[ ] 使用していないJSの削除
[ ] サードパーティスクリプトの遅延読み込み(afterInteractive/lazyOnload)
[ ] CSSの最小化・未使用CSSの削除
キャッシュ・CDN
[ ] CDNの設定(Vercel/Cloudflare等)
[ ] キャッシュヘッダーの適切な設定
[ ] 静的アセットへの長期キャッシュ設定
レンダリング戦略(Next.jsの場合)
[ ] 各ページに適したレンダリング戦略(SSG/ISR/SSR)を設定
[ ] 不要なclient componentの削減
Phase 4:効果測定と検証(施策実装後1〜2週間)
4-1. Lab Dataの即時確認
施策を実施したら、PageSpeed InsightsとLighthouseで即座にLab Dataを計測します。
注意点:同じ条件で5回計測して、平均値で評価します。計測のたびに数点変動するのは正常です。
4-2. Field Dataの確認(数週間後)
Search ConsoleのCore Web VitalsレポートはField Data(実際のユーザーデータ)を表示しますが、データの反映に2〜4週間かかります。
施策実施後2〜4週間後にField Dataを確認して、実際のユーザー体験が改善されているかを検証します。
4-3. ビジネス指標への影響の確認
表示速度の改善は、以下のビジネス指標に影響することがあります。
直帰率の低下
平均ページ滞在時間の増加
コンバージョン率の向上
オーガニック検索順位の改善
GA4で施策実施前後の比較をして、ビジネス指標への影響を確認します。
Phase 5:継続的なモニタリング
月次の定期確認
確認項目 | ツール | 所要時間 |
PageSpeed Insightsスコアの推移 | PageSpeed Insights | 30分 |
Field Dataの評価 | Search Console | 15分 |
新規追加ページの速度確認 | PageSpeed Insights | 15分 |
大きな変更時の確認
以下のタイミングでは必ず速度の確認を行います。
テーマ・プラグインの大きなバージョンアップ
新しいプラグイン・機能の追加
大規模なコンテンツ変更
ホスティング環境の変更
継続的な改善
表示速度の最適化は「一度やれば終わり」ではありません。新しい機能の追加・コンテンツの蓄積・外部サービスの追加によってパフォーマンスが低下することがあります。四半期に1回程度の包括的な診断と改善サイクルを確立することを推奨します。
まとめ
表示速度改善プロジェクトは「診断→計画→実装→測定→継続運用」の5フェーズで体系的に進める。
最も重要なのは「改善前の数値を記録すること」と「施策を一つずつ実施して効果を確認すること」です。この原則を守ることで、どの施策が効果的だったかを把握し、次の改善の優先順位を正確に判断できます。
次の記事では、表示速度改善の具体的な成果——実際のケーススタディを解説します。
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