AIエージェントの仕組み|ツール・メモリ・計画の3要素
AIエージェント入門AIエージェントの仕組みをツール・メモリ・計画の3要素で解説します。Function CallingやRAGとの関係、実際の動作プロセスを具体的な例を交えてわかりやすく説明します。
はじめに
AIエージェントが「自律的に動く」とはいっても、その内部では具体的にどのような処理が行われているのか。ブラックボックスのまま「なんとなくすごい」と理解するのでは、ビジネスでの正確な活用判断ができません。
本記事では、AIエージェントの内部アーキテクチャを構成する3つの主要要素——「ツール(Tool)」「メモリ(Memory)」「計画(Planning)」——を平易に解説します。
AIエージェントの基本アーキテクチャ
AIエージェントの中心にあるのは「LLM(大規模言語モデル)」です。ChatGPTやClaudeの基盤となっているモデルと同じですが、AIエージェントではこのLLMに「ツール」「メモリ」「計画」という3つの仕組みを組み合わせることで、自律的な行動を可能にしています。
このループを自律的に繰り返すことがAIエージェントの本質的な動作です。
要素1:ツール(Tool Use)
ツールとは何か
ツールとは、AIエージェントが外部の情報・機能にアクセスするための「手段」です。人間がスマートフォンでGoogle検索したり、電卓で計算したり、メールアプリでメールを送るように、AIエージェントは「ツール」を呼び出すことで、自身の知識の範囲を超えた情報取得・操作を行える。
代表的なツールの種類
情報取得ツール
ウェブ検索(Google検索API等)
Webページの取得・閲覧
データベースの参照・検索
APIからのデータ取得(気象データ・株価・ニュース等)
計算・処理ツール
コード実行(Pythonコードを実行して計算・データ処理を行う)
数学的計算
データ分析・グラフ生成
操作ツール
ファイルの作成・読み込み・編集
メール・カレンダー操作
Webブラウザの操作(クリック・フォーム入力)
外部サービスのAPI操作(Slack・Notion・Salesforce等)
ツール使用の仕組み(Function Calling)
LLMがツールを使う仕組みを「Function Calling(関数呼び出し)」または「Tool Use」と呼びます。
開発者がLLMに「使えるツール一覧」を事前に定義する(ツール名・説明・必要なパラメーター)
ユーザーからの指示をLLMが受け取る
LLMが「この目標を達成するにはどのツールを呼び出すべきか」を判断する
ツールを呼び出し、結果を受け取る
結果をもとに次のアクションを判断する
このFunction Callingの標準化が、AIエージェント開発のハードルを大幅に下げました。
MCPとツールの拡張
2024年にAnthropicが発表したMCP(Model Context Protocol)は、LLMがさまざまな外部ツール・データソースと接続するための標準プロトコルです。MCPサーバーを介することで、あらゆる外部サービス(GitHub・Slack・Google Drive等)をAIエージェントのツールとして組み込むことができます。
要素2:メモリ(Memory)
なぜメモリが必要か
LLMには「コンテキストウィンドウ(文脈を保持できる範囲)」という制限があります。長い作業を続けるうちに、最初の指示・途中で得た情報を「忘れる」ことがあります。また、セッションをまたいで情報を保持することもデフォルトではできません。
AIエージェントが継続的・複雑なタスクを実行するためには、情報を適切に記憶・参照するメモリの仕組みが不可欠です。
メモリの4種類
1. インコンテキストメモリ(作業記憶)
現在の会話・タスク実行の文脈をコンテキストウィンドウ内に保持するメモリです。人間の「作業記憶」に相当します。セッションが終わると消える。
2. 外部記憶(長期記憶)
データベース・ファイル・ベクトルデータベースなどに情報を保存し、必要なときに検索・参照します。セッションをまたいで情報を保持できます。
3. エピソード記憶
過去の会話履歴・タスク実行の記録を保存し、「前回この顧客とどんな会話をしたか」「この処理は以前試みて失敗した」といった経験を参照できます。
4. ベクトルデータベースを使ったセマンティック検索
テキストの意味的な類似性に基づいて関連情報を検索するメモリです。RAG(Retrieval Augmented Generation)の基盤となる技術で、「この質問に関連する自社のFAQはどれか」という検索が可能になります。
RAGとの関係
RAG(Retrieval Augmented Generation)は、AIエージェントのメモリ管理において中核的な技術です。詳細は第5回で解説しますが、「ユーザーの質問に関連するドキュメントをベクトル検索で取得し、LLMに渡して回答を生成する」という仕組みで、AIが「自社のコンテンツに基づいて正確に答える」ことを可能にします。
要素3:計画(Planning)
計画とは何か
計画とは、与えられた目標を達成するために「何を・どの順序で・どのように実行するか」を決定するプロセスです。AIエージェントはLLMの推論能力を使って、複雑なタスクを実行可能なステップに分解し、実行計画を立てる。
計画の主要なパターン
Chain of Thought(思考の連鎖)
「ステップバイステップで考える」アプローチです。LLMに「段階的に考えながら解答せよ」と促すことで、複雑な問題の解決精度が向上することが研究で示されています。AIエージェントの計画立案においても、この思考プロセスが活用されます。
ReAct(Reasoning + Acting)
推論(Reasoning)と行動(Acting)を交互に繰り返す計画パターンです。「現在の状況を分析→次のアクションを決定→実行→結果を評価→次のアクションを決定」というループを繰り返す。
Tree of Thought(思考の木)
複数の解決アプローチを同時に検討し、最も有望なものを選択・深化させるパターンです。囲碁のAIがさまざまな手を探索するのと似ています。
自己修正(Self-Reflection)
高度なAIエージェントは、実行結果を自己評価し、目標に達していない場合に計画を修正・再実行する能力を持つ。「最初のアプローチで期待した結果が得られなかった→別の方法を試みる」という人間の問題解決プロセスに近い動作です。
3要素の連携:具体的な動作例
「競合他社の最新ブログ記事を分析し、自社コンテンツへの示唆をまとめてください」というタスクを例に、3要素の連携を見てみる。
Step 1:計画立案
LLMがタスクを分解します。①競合サイトURLの特定→②最新記事リストの取得→③各記事の内容取得→④分析→⑤示唆のまとめ
Step 2:ツール実行×メモリの連携
ウェブ検索ツールで競合サイトURLを取得→インコンテキストメモリに保存
Webページ取得ツールで各記事を取得→外部メモリ(一時ファイル)に保存
テキスト分析ツールで各記事のトピック・キーワードを抽出
Step 3:自己評価と修正
取得した記事が古い場合(更新日を確認)→最新記事のみに絞り込んで再取得
Step 4:結果生成
蓄積した情報をもとにLLMが分析レポートを生成して返答します
まとめ
AIエージェントは「LLM」を中心に「ツール(外部機能へのアクセス)」「メモリ(情報の保存・参照)」「計画(タスクの分解・実行・評価)」の3要素が連携することで、自律的な目標達成を実現します。
次の記事では、AIエージェントの種類——シングル・マルチ・自律型の違いと使い分けを解説します。
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