マット・マレンウェッグのAutomattic休職と復帰 何が起きたのか、WordPress運用に影響はあるのか

2026年9月9日、Automatticの取締役会が創業者マット・マレンウェッグ氏を有給休職とする決議を可決し、CFOのマーク・デイヴィス氏が暫定CEOに就きました。しかし9月12日、同社は「マレンウェッグ氏は取締役会の全面的な支持を得た会長兼CEOである」と表明し、復帰を確認しています。会社側の説明では、不在は「33時間20分」でした。休職決議の理由は現在も公表されていません。WordPress本体やプラグイン更新への直接的な影響は確認されていませんが、この一件は「一社・一人への依存」というリスクを改めて可視化しました。
確定している事実と時系列
報道と会社発表で裏付けが取れている範囲は次のとおりです。
9月9日(米国時間):マレンウェッグ氏が全社Slackに投稿し、デイヴィス氏が取締役のアン・ダンウッディ氏、トニー・シュナイダー氏、スー・デッカー氏と「共謀」して有給休職の決議を可決したと主張。本人は反対票を投じ、決議案は会議開始の50分前に受領、独立した弁護士による確認の時間を求めたが認められなかったと述べています(404 Mediaが最初に報道)。
同日:Automatticは「マレンウェッグ氏は現在休職中」「デイヴィス氏が暫定CEOとして会社を率いる」と各メディアに回答。同氏は取締役には留まると社内に説明されました。
WordPress.orgのエグゼクティブディレクター、メアリー・ハバード氏はコミュニティ向けに、マレンウェッグ氏が引き続きWordPressプロジェクトのリーダーであり、チームや優先事項は計画どおり継続すると説明。
9月11日:マレンウェッグ氏がSlackで「取締役会は再び合意し、自分がAutomatticをコントロールしている」と投稿。この間、社内Slackの管理者権限を他のメンバーから外したと複数の関係者がTechCrunchに証言しています。
9月12日:Automatticが復帰を公式に確認。
9月14日:TechCrunchとThe Repositoryが、休職決議に賛成した取締役が退任し、暫定CEOだったデイヴィス氏や法務責任者アンディ・ミサン氏も同社を離れたと関係者情報として報道。Automatticは個別の人事に言及せず、「関係者への敬意」と「マットの下での前進」を述べる声明を出しました。
理由は公表されていない。推測と事実を混ぜない
最も重要な点は、取締役会がなぜこの時期に動いたのかが依然として不明だということです。会社は理由を説明していません。
マレンウェッグ氏本人は、休職が伝えられた当日夜にX上でWP Engine訴訟に言及し、証拠保全をめぐる制裁申立て(同氏がWhatsAppやSignalなどで証拠を破棄したとする主張)について「悪意をもって証拠を毀損したと判断される可能性がある」と危機感を示し、疑いを強く否定しました。ただし、これが休職決議の理由だと確認されたわけではありません。Burning Man参加後のタイミングという社内の推測も報じられていますが、裏付けはありません。
読者として押さえるべきは、「取締役会が多数決で創業CEOを一時的に外し、数日で元に戻り、今度は賛成した取締役側が去った」という結果だけが事実で、動機の説明は空白のままだ、という構図です。
WordPressサイトの運用に影響はあるのか
現時点で、稼働中のWordPressサイト、コアの更新、プラグイン・テーマの配信に障害が起きたという報告はありません。WordPress.org側もプロジェクト継続を明言しています。短期的に緊急対応が必要な事象ではありません。
一方で、構造的な懸念は残ります。2024年の紛争では、AutomatticがWP EngineのWordPress.orgへのアクセスを遮断し、同社顧客サイトが更新を取得できない状態が発生しました(同年12月に裁判所の命令で復旧)。つまり、更新配信という運用の生命線が中央の一点に依存しており、その一点の判断は経営・訴訟の動向に左右され得ます。今回のガバナンス混乱は、その一点への権限集中がむしろ強まった可能性を示しています。
CMS選定を見直す理由になるか
今回の一件だけを根拠にWordPressを外す判断は、多くの案件で過剰です。CMSとしての機能、人材の確保しやすさ、既存資産の移行コストは変わっていません。見直すべきなのはCMSの銘柄ではなく、次の3点です。更新と保守の責任が誰にあるか、更新配信が止まった場合に何時間で復旧できるか、コンテンツを他基盤へ持ち出せる形式で保持しているか。この3点に答えられる運用体制なら、経営陣の混乱はニュースとして追うだけで足ります。
まずはバックアップの復元テストと、プラグインの更新経路の一覧化から始めてください。その結果を見て、分散配信の導入や依存プラグインの置き換えを検討する順番が現実的です。自社サイトの依存関係の棚卸しや、移行・保守体制の見直しを外部の視点で整理したい場合は、chot Inc. のお問い合わせからご相談ください。


