この10年でデザインはどう変わったのか、これからの10年に何をデザインするのか

「この10年でデザインはどう変わったのか。そして、これからの10年にデザイナーは何をデザインするのか」。これは2026年10月24日に東京・高田馬場で開かれるイベント「DECADE // DESIGN // DEPERTURE」が掲げる問いです。先に結論を書きます。この10年の変化は、デザインツールが個人のファイルからチームの共同編集環境へ移り、さらにAIが成果物そのものを出す側に回ったことです。その結果、次の10年にデザイナーが設計する対象は、画面そのものよりも「何を良しとするかの判断基準」と、その基準を人とAIの双方が読める形に整えることへ移っていきます。
この10年の変化は、ツールの栄枯盛衰ではなく制作環境の構造変化
象徴的なのがAdobe XDです。2015年前後に登場し、画面設計とプロトタイプ作成を一つのツールで完結させる流れをつくりました。しかしアドビは2022年9月にFigmaの買収計画を発表し、2023年1月には単体プランの販売を終了してXDをメンテナンスモードとする方針を明らかにしています。買収自体は2023年12月に解消されましたが、XDへの追加投資が行われない状況は続いています。
ここで起きたのは「XDがFigmaに負けた」という話にとどまりません。ファイルを受け渡す制作から、同じ画面を複数人が同時に触る制作へ。単発の画面デザインから、コンポーネントとトークンを共有するデザインシステムへ。イベント主催者も、この10年でプロトタイピング・デザインシステム・リアルタイム共同作業が当たり前になったと整理しています。デザイナーの成果物が「絵」から「仕組み」に変わった10年だった、と言い換えられます。
2026年のツールは、コードと動きと生成を同じ場所で扱い始めた
2026年6月23〜25日に開催されたFigmaの年次カンファレンス「Config 2026」では、6つの機能が発表されました。デザインレイヤーを動くコードに変換しGitHubリポジトリも取り込めるコードレイヤー(クローズドベータ)、タイムラインとキーフレームでアニメーションを作るFigma Motion、プロンプトから質感や効果を生成するシェーダー、会話でプラグインを作る生成プラグイン、AI画像ワークフローのWeaveツール、そしてスキルと外部接続を備えたFigma agentです。
注目すべきはagentのスキル機能です。チームの手順や規約を再利用可能な指示としてまとめ、共有できます。つまり、これまで先輩の背中やレビューの口頭指摘で伝えていた「うちのやり方」を、実行可能な形で書き出す作業が仕事になります。デザインシステムやトークンも同様に、AIが参照する入力へと役割が広がります。手を動かす速さの価値は下がり、何を基準に採否を決めるかを言語化できる人の価値が上がる。これが次の10年の中心的な変化だと考えられます。
社会の側の要求も変わった:アクセシビリティは「やれば偉い」から前提へ
作る環境だけでなく、求められる品質の基準も動いています。2024年4月1日施行の改正障害者差別解消法により、事業者にも合理的配慮の提供が義務づけられました。ただし誤解されやすい点として、ウェブアクセシビリティの確保は「環境の整備」に位置づけられ、法的には努力義務です。罰則規定もありません。
とはいえ、デジタル庁は2024年3月に「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」を公開し、JIS X 8341-3:2016を基準に、方針の策定と適合レベル(A/AA)、対応度(配慮・一部準拠・準拠)の考え方を示しています。国際的にはWCAG 2.2が2023年10月に勧告となり、ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)はこれをベースにしたJISの改正を検討していると2024年9月の資料で説明しています。公共調達や大企業の発注要件に書かれる項目は、今後さらに具体化していくと見るのが自然です。AIが画面を量産できるようになるほど、「誰のために、どの基準を満たすのか」を決める作業が人の側に残ります。
次の10年に備えて、いまから着手できる4つのこと
- レビュー観点を文章にする。普段のデザインレビューで指摘している内容を10〜20項目のチェックリストに落とします。これはそのままagentのスキルやプロンプトの原資になります。
- デザインシステムを機械可読に寄せる。命名規則、トークン、コンポーネントの用途説明を整えます。AIが構造を読んで再現する前提では、見た目の整合より意味の明示が効きます。
- アクセシビリティ方針を1枚つくる。対象範囲と目標適合レベルを決め、まずはレベルAと「非干渉」の達成基準から着手します。方針の提示は対応度を表記する際の前提になります。
- ツール依存のリスクを点検する。XDの事例が示すのは、主要ツールでも数年で方針が変わりうることです。データの書き出し手段と移行コストを、年に一度は確認しておく価値があります。
これらはいずれも、AIが得意な作業(生成・反復・量産)ではなく、人が決めるべき領域(基準・範囲・優先順位)を手元に残すための準備です。
10月24日のイベント概要
「DECADE // DESIGN // DEPERTURE」は2026年10月24日(土)12:30〜17:30、東京・新宿のCASE Shinjukuで開催されるオフラインイベントです。主催は約10年前にAdobe XDのコミュニティで知り合った北村崇さん、湯口りささん、cremaさんの3人。一般参加は先着30名、参加費は1,000円の会場払いで、オンライン配信は予定されていません。1人10〜15分のライトニングトークが複数予定されています。
この10年の変化を一言でまとめるなら、デザイナーの仕事は「作ること」から「作られたものを判断すること」へ重心を移してきました。次の10年に向けて最初の一歩を選ぶなら、自分がいま無意識に使っている判断基準を書き出すところから始めるのが確実です。それはチームの共有資産にも、AIへの指示にも、そのまま使えます。
出典
- DECADE // DESIGN // DEPERTURE(イベント概要・参加申込ページ)
- Web Designing: デザインの過去10年と未来を考える交流イベント、10月24日に高田馬場で開催
- Figma ヘルプセンター: Config 2026で発表された新機能(What's new from Config 2026)
- Figma 公式ブログ: Config 2026 の発表まとめ
- マイナビニュース: アドビ、「Adobe XD」単体販売を終了 - メンテナンスモードへ
- デジタル庁: ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック(2024年3月29日発行)
- ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC): これから取り組むWebアクセシビリティ(セミナー資料)
- デジタル庁デザインシステム: ウェブアクセシビリティ検証結果(令和6年度)


