会話から始めるサイト制作。要件は固まってなくてOK

「まだ何も固まっていなくて、この状態でご相談していいものか」
問い合わせフォームの前で、そう思って止まっている方は少なくないと思います。実際、初回の打ち合わせでこう言われることは珍しくありません。
先に結論を書きます。固まっていない状態のほうが、むしろ普通です。
相談は、たいてい要件から始まらない
実際にご相談をいただくとき、最初に出てくるのはこういう話です。
「更新のたびに外に頼んでいて、手間がかかっている」 「見た目が古くなってきて、営業のときに見せづらい」 「問い合わせが減っている気がする」
要件ではなく、不満や違和感です。ページ数もデザインの方向性も、この時点では決まっていません。それで問題ありません。
むしろ、要件を先に固めてしまうと手段が先に決まってしまうことがあります。「トップページを作り替えたい」というご相談が、話を聞いていくと「更新できる仕組みがないことが本当の問題だった」と分かる。こういうことは実際に起こります。
決まっていると話が早いのは、3つだけ
とはいえ、何もない状態だと会話が始まりにくいのも事実です。次の3つがあると、初回から具体的な話ができます。
1. 何のために作り替えるのか
「古いから」でも構いませんが、その先に何を期待しているか。問い合わせを増やしたいのか、採用で見せられるようにしたいのか、更新の手間を減らしたいのか。ここで話の方向が決まります。
2. いつまでに必要か
決算期、展示会、周年、採用の募集開始。期限があると、逆算して何ができるかが見えます。「特にない」でも構いませんが、その場合は「特にない」と言っていただくのが正確です。
3. だいたいの予算感
これが一番言いにくいところだと思います。ただ、正確な金額でなくて構いません。社内で通せそうな上限がどのあたりか。それだけ分かれば、提案の中身が変わります。
金額を伝えると足元を見られるのでは、と思われるかもしれません。逆です。予算が分からないまま提案すると、外れた提案しか出てきません。 見積もりが想定の3倍で出てきて、話がそこで止まる。お互いの時間が無駄になります。
決めなくていいこと
一方、こちらは決めていただかなくて構いません。
ページ構成 — 何ページ必要か。どんな階層にするか
デザインの方向性 — 参考サイトがあれば助かりますが、なくても進みます
技術構成 — CMSは何にするか。サーバーをどうするか
機能の詳細 — 検索機能は要るか、多言語対応はどうするか
これらは、目的を聞いたうえでこちらから提案すべきことです。決まっていないから相談できない、という順序ではありません。
もちろん、社内の稟議や比較検討のために要件を先にまとめたい場合もあると思います。その場合は書き方をまとめた記事があるので、こちらを参考にしてください。
→RFP(提案依頼書)の書き方|Web制作会社への依頼を成功させる
専門用語も、覚えなくていい
CMS、ヘッドレス、静的生成、API連携。制作会社の説明にこうした言葉が出てくることがあります。
これを覚える必要はありません。
用語を使わずに説明できないなら、それは説明する側の問題です。「更新するときに、こういう画面から変えられます」「今使っている在庫システムと繋げられます」。この形で伝わらなければ、伝え方が悪い。
もし相談の場で用語が続いたら、遠慮なく「それはどういうことですか」と聞いてください。説明できる会社なら、言い換えて答えるはずです。 分からないまま進めて困るのは、作った後の発注側だからです。
決まっていない状態で相談されると、何をするのか
「じゃあ何を話せばいいのか」と思われるかもしれないので、こちらが何をするかを書いておきます。
まず、いまのサイトを一緒に見ます。どこを更新しているか、どこを使っていないか、どこで手間がかかっているか。現物があると、話が具体的になります。
次に、誰が使っているかを伺います。社内で更新している人がいるのか、外に頼んでいるのか。見ている人は誰なのか。ここで、作り替えるべき範囲が見えてきます。
そのうえで、いくつかの方向を出します。この時点でも、まだ提案書は作りません。方向が固まってから、初めて具体的な話に入ります。
要件は、この過程で一緒に作るものです。持ってきていただくものではありません。
ただし、自社にしか分からないこともあります
ここは正直に書きます。何も決めなくていい、という話ではありません。
事業として何を大事にしているか。どの顧客に向けたサイトなのか。社内の誰が更新することになるのか。これは外から推測できません。ここだけは、一緒に考えることになります。
逆に言えば、技術のことも、デザインのことも、進め方も、こちらが持つべき領域です。そこまで発注側が用意する必要はありません。
決まってから来てほしいとは、思っていません
私たちがこの記事を書いているのは、準備が足りないという理由で相談が止まっているとしたら、それはもったいないと思うからです。
「何から話せばいいか分からない」という状態でも構いません。いまのサイトのURLと、困っていることを一言だけ。それだけあれば、話は始められます。