QuiverAIとは何か:SVGを直接生成するベクター特化AIの仕組み・料金・API

QuiverAI は、ラスター画像を経由せず編集可能な SVG を直接生成する AI プラットフォームです。公式サイトは「生成・編集・アニメーション」を柱に掲げ、2026 年 9 月 7 日に最新モデル Arrow 2 と Arrow 2 Telos を公開しました。ロゴ、アイコン、図解、線画のように構造がはっきりした素材を Figma や Illustrator、コードベースにそのまま持ち込みたい場合の候補になります。ただし旧モデル Arrow 1.x が 2026 年 10 月 16 日に停止し、課金方式もトークン課金へ変わるため、検証と移行の判断は早めに済ませる必要があります。
QuiverAI でできること
提供機能は SVG の生成、ラスター画像のベクター化、既存 SVG の編集、アニメーションです。テキストから SVG を作る Text to SVG と、画像を SVG に変換する Image to SVG が用意され、参照画像を添えてスタイルや構図を寄せることもできます。利用形態はブラウザアプリと API の 2 つで、API には REST エンドポイントに加え、OpenResponses 互換の Responses エンドポイントが用意されています。
公式トップページのユースケース欄では、ロゴとイラストが利用可能、タイポグラフィ(書体・レターフォーム生成)とアニメーションには「Coming soon」の表記が付いています。一方で Arrow 2 の発表記事はロゴリバールやローディング表現向けのマイクロアニメーションを紹介し、料金ページのプラン比較でもアニメーションは全プランに含まれると記載されています。表記が一致していないため、アニメーションを前提に導入を決めるなら、自分のアカウントで実際に動作するかを確認してから判断するのが安全です。
ピクセルではなくコードを生成する、という設計
一般的な画像生成 AI はピクセルを出力するため、SVG が必要な場合は後からトレース(自動輪郭抽出)することになります。トレースはアンカーポイントが増えやすく、レイヤー構造も崩れがちです。QuiverAI はこの工程を挟まず、SVG コードそのものを生成する方式を採っています。
この方向性の学術的な土台は、SVG 生成を「コード生成タスク」として捉える StarVector の研究にあります。StarVector は画像とテキストの両方を入力に取り、SVG のプリミティブ(円、多角形など)を使ってコンパクトな出力を作る手法で、CVPR 2025 で発表され、約 200 万件の SVG データセット SVG-Stack で学習されています。注目すべきは、その公開モデルが自然写真や絵画的なイラストには向かず、アイコン、ロゴタイプ、技術図、グラフの表現に強いと明記されている点です。ベクター生成が得意な領域はおおむねここに重なります。写実的な質感やグラデーションの多い絵を狙うほど、パス数が膨らみ編集しづらくなる傾向は、アプローチが変わっても残ります。
Arrow 2 について公式は、制御点をより少なく正確にしてノードの無駄や重なりを減らしたこと、余白や整列といった構図の扱いが改善したこと、生成が高速化したことを挙げています。参照画像から配色や形状言語を保ったバリエーションを作る使い方、解剖図のような強調表現を含む図解、縫い目や構造を保った技術線画、手描きスケッチのベクター化が具体例として紹介されています。
料金と、10 月 16 日の Arrow 1.x 停止
アプリ側のプランは Go が月 8 ドル、Basic が月 20 ドル、Pro が月 40 ドル、Enterprise は個別見積もりです。各プランには週あたりの利用枠(Go は 5 ドル相当、Basic は 15 ドル、Pro は 40 ドル)が含まれ、毎週月曜の UTC 時点でリセットされ、繰り越しはありません。超過分はプリペイド残高から引かれ、自動チャージも設定できます。Go には 14 日間のトライアル(カード登録が必要)があります。重要なのは、サブスクリプションの枠はアプリ専用で、API 利用は別途プリペイド残高が必要という点です。
API の料金は、Arrow 2 が 100 万トークンあたり入力 4 ドル・出力 20 ドル、Arrow 2 Telos が入力 6 ドル・出力 30 ドル(Arrow 2 の 1.5 倍)です。コンテキストウィンドウは Arrow 2 が 131,072 トークン、Telos が 1,050,000 トークンで、最大出力はいずれも 65,536 トークンです。公式ドキュメントは、どちらのモデルにも「SVG 1 枚あたりの固定価格はない」と明記しています。
ここが移行判断の要点です。退役する Arrow 1.1 は 1 枚 0.20 ドル、ベクター化 0.15 ドルという固定課金で、枚数から費用を計算できました。トークン課金では、SVG の複雑さ次第で 1 枚のコストが変動します。したがって移行前に、実務で使う代表的なプロンプトと画像を数十件流し、1 枚あたりの平均トークンとばらつきを実測しておくことが現実的です。停止は 2026 年 10 月 16 日 08:00 UTC(日本時間同日 17:00)で、対象 ID は arrow-1、arrow-preview、arrow-1.1、arrow-1.1-max です。ネイティブのエンドポイントパスは変わらないため、多くの場合はモデル ID の差し替えと費用前提の見直しが作業の中心になります。
開発・エージェントへの組み込み
API は Responses 形式が SSE ストリーミングに対応し、Vercel AI SDK 用の @ai-sdk/open-responses や Node.js 向けの @quiverai/sdk から呼び出せます。2026 年 6 月にはホスト型の MCP サーバーが公開され、Cursor や Codex 向けプラグインも用意されています。CLI では npx quiverai add にあたるコマンドで、生成した SVG を React コンポーネントとして取り込めます。
運用面で効いてくるのは、開発時の安全弁です。sk_test_ で始まるテストキーはサンドボックスから決定的な出力を返し、モデルを呼ばず課金も発生しません。CI や自動テストで API 呼び出しの配線を検証する用途に向きます。全レスポンスにレート制限ヘッダーと X-Request-ID が付き、429 では Retry-After が返るため、リトライとログ追跡は素直に実装できます。
権限設計にも注意が必要です。ドキュメントは、モデルがカタログに表示されることと、そのキーで呼べることは別だと明示しています。キーごとに操作(Responses、カタログ参照、SVG 生成など)とモデルを許可する設計になっているため、まず GET /v1/models で利用可能なモデルと supported_operations を確認し、キーの権限を合わせてから実装に入る流れが確実です。公式クイックスタートも、Arrow 2 にツール呼び出しで SVG を書き出させ、完了したレスポンスのみをファイル保存する例を示しており、途中の推論テキストや部分的な出力を完成物として扱わない設計を勧めています。
他の選択肢と、検証の進め方
ネイティブに SVG を出力するツールは QuiverAI だけではありません。Recraft は V4.1 の Vector モデルでテキストから SVG を生成し、無料アカウントでも 1 日 30 回まで SVG エクスポートを含めて利用できるとしています(商用利用や上限拡大は有料プラン)。Figma や Chrome 向けの拡張からも呼び出せ、キャンバス上で配色や要素の整理ができる点が特徴です。
選ぶ基準を整理すると、次の 3 点に集約できます。
- 作業の場所:デザイナーが画面上で仕上げるなら編集機能の充実したアプリ型、CMS やビルドパイプラインで大量生成するなら API と MCP を備えた QuiverAI のような構成が合います。
- モデルの使い分け:QuiverAI 内でも、速度と単価を優先するなら Arrow 2、複雑な指定や長いコンテキストを扱うなら Telos という切り分けが公式に示されています。
- 出力の質の測り方:見た目だけでなく、パスと制御点の数、レイヤー構造の分かれ方、ファイルサイズ、文字要素の扱いを実ファイルで確認します。テキストエディタで開き、base64 画像が埋め込まれていないかを見るだけでも「見かけだけの SVG」を除外できます。
本番投入の前には、生成物をそのまま公開ディレクトリに置かず、不要なメタデータの削除や最適化、アクセシビリティのための代替テキスト付与を通す運用にしておくと安全です。SVG は XML であり、外部から受け取ったファイルを無検査で埋め込むのは避けるべき形式でもあります。加えて、商用利用の範囲と入力データの取り扱いは、利用規約とデータ管理の設定ページで事前に確認しておきたい項目です。
まとめと次の一手
QuiverAI は「ベクターをコードとして作る」という一貫した設計で、ロゴ・アイコン・図解・線画といった構造的な素材に強みを持つツールです。現在アクションが必要なのは、Arrow 1.x を使っている場合の移行です。10 月 16 日までに arrow-2 で同じプロンプトを走らせ、品質とトークン消費量を実測し、固定課金からトークン課金への費用差を把握してください。これから試す段階なら、テストキーのサンドボックスで配線を確認し、Go プランの 14 日間トライアルで実際の出力を数十件見てから、アプリ中心か API 中心かを決めるのが無駄のない順序です。


