入力させないAI。Yahoo!天気の新機能が示す、これからのUI設計

「AIチャットを導入したのですが、ほとんど使われていません」
サイトにAIを組み込む相談をいただくなかで、こうした話を聞くことがあります。機能としては正しく動いている。それでも使われない。
その理由を考えるうえで示唆的な機能が、先日リリースされました。
テキスト入力が「不要」であることを価値にした機能
LINEヤフーが2026年7月21日、「Yahoo!天気」アプリで「天気コーデ」という機能の提供を開始しました。天気や気温に応じた最適な服装・持ち物を、画像で確認できる機能です。(※1)
注目したいのは、「天気コーデ」の使い方です。性別と年代を選び、「オフィスカジュアル」「カジュアル」といったスタイルとエリアを選ぶ。それだけで、その日の服装が画像で表示されます。そのうえで、テキストの入力や指示が不要である点を先に打ち出しています。(※1)
しかも表示は3日先まで確認できます。何も入力していないのに、明後日の服装まで分かる。(※1)
生成AIを使った機能でありながら、何でも聞ける自由度ではなく、聞かなくていいからこその手軽さを売りにしている。ここが面白いところです。
なぜ入力させないほうがいいのか
背景には、ユーザーの実際の困りごとがあります。
同社の発表によれば、この機能は「気温が24度ということはわかったが、何を着るとちょうど良いか」「朝夜の寒暖差が激しいが、上着は必要か」といった、天気予報の情報と実際の服装選びが直結しにくいという声から生まれています。(※1)
ここで仮に、天気アプリに自由入力のAIチャットが付いていたとします。ユーザーは「明日の東京の気温だと何を着ればいいですか。オフィス勤務で、夜遅くなる予定です」と入力しなければなりません。
答えは得られるでしょう。しかし、その文章を考えて打つ手間が発生します。そして多くの人は、そこまでするなら自分で判断してしまいます。
企業サイトのAIチャットが使われない理由も、同じ構造です。入力欄が空白のまま置かれていると、ユーザーは「何を聞けばいいのか」から考えなければなりません。この最初のハードルが、想像以上に高いのです。
「情報を出す」から「判断を返す」へ
もう一つ、この「天気コーデ」が示している変化があります。
従来の天気予報が提供していたのは情報でした。「明日の最高気温は24度です」。そこから何を着るかは、ユーザーが自分で考える必要がありました。
天気コーデが返しているのは判断です。「この服装がちょうど良いです」。しかも画像で示されるため、解釈の手間もありません。
企業サイトのAIチャットも同じです。「制作費は内容によって変わります。詳しくはお問い合わせください」と返すのは情報です。「その規模なら、だいたいこのくらいです」と返すのが判断です。ユーザーが知りたいのは後者で、前者だと結局フォームを開くことになります。
ただし「チャットが悪い」という話ではない
ここで誤解したくないのは、入力欄そのものが問題なのではないという点です。
複雑な相談や、想定していなかった質問には、自由に書けることが不可欠です。選択肢だけでは、用意された範囲の答えしか返せません。
問題は、真っ白な入力欄をいきなり差し出すことです。
必要なのは、最初の一歩を用意しておくこと。よくある質問をボタンとして提示する、ユーザーの状況に応じて質問の候補を出す、選択から始めて必要になったら自由入力に切り替えられるようにする。入口さえあれば、その先は対話で深めていけます。
当社サイトのAIアシスタントも、最初に「Webサイトを制作したい」といった選択肢を出すところから始めています。ボタンを選んでいくだけで進み、最後に概算の費用感までお返しします。何を聞いてもいい状態より、まず一つ選べる状態のほうが、実際に使われるためです。
このページ下部のAIアシスタントも同じ作りです。
設計するときの3つの観点
自社サイトにAIを組み込むとき、あるいはすでに組み込んで使われていないとき、確認したい点は次の3つです。
1. 入口が用意されているか
ユーザーが最初に何をすればいいか、画面を見ただけで分かるようになっているか。「何でも聞いてください」は、実は何も案内していないのと同じです。
2. 選択から始められるか
文章を書かなくても、選ぶだけで先に進める導線があるか。入力は、必要になった段階で使えれば十分です。
3. 判断まで返しているか
情報を並べて終わりになっていないか。ユーザーが自分で解釈しなければならない状態は、AIを使っている意味が半減します。
その前に、使われているかが見えているか
この3つを確認する前提として、そもそも使われているかどうかが分かる状態になっているか。ここが抜けていることは実際にあります。
何件やり取りが発生したのか、どこで離脱したのか、問い合わせにつながったのか。導入したものの、そこが計測されていない。この状態だと「使われていない」ことにも「使われている」ことにも気づけません。直したあとに良くなったのかも判断できません。
改善の前に、まず見えるようにする。順番としてはここが先です。
設計は、当てはめられない
この3つは、画面を見れば自分でも確認できます。難しいのは、その先の設計です。
どんな選択肢を最初に出すか。どこまで聞いたら答えを返すか。返したあと、どこへ案内するか。ここは業種によっても、問い合わせの取り方によっても変わるので、正解を持ってきて当てはめることができません。
載せただけでは、使われない
AIをサイトに組み込むこと自体は、以前より簡単になりました。それでも使われないサイトがあるのは、載せることと使われることが別の問題だからです。差が出るのは搭載の有無ではなく、使われる設計になっているかのほうです。
とはいえ、「自社サイトにAIを入れるとして、何ができるのか想像がつかない」という段階の方も多いと思います。そこから始めていただいて構いません。AIに何を任せられて何を任せられないのか、現状のサイトを見せていただければ、その場で当たりをつけられます。
出典
※1 LINEヤフー株式会社「Yahoo!天気、新感覚の天気AIエージェント『天気コーデ』機能を提供開始」(2026年7月21日) https://www.lycorp.co.jp/ja/news/release/020640/